MANULのブログ

総合格闘技の生涯スポーツ化を考えるブログ

総合格闘技と筋トレ

格闘技に筋トレは必要か。
現在にいたるまで大いに議論になる話題の一つではないでしょうか。格闘技に限らず、ウエイトリフティングボディビルディングなどを除くスポーツにおいて、はたして筋トレは必要なのかが話題になります。
競技に必要な筋肉は、その競技の反復によって身につけるものである。ボディビル的な筋肉は競技にとって過剰であり、邪魔な筋肉として競技動作を妨げる。格闘技では体重による階級分けがありますから、筋肉の重さは議論の的になります。イチローが言ったといわれる筋トレにまつわる言葉も、独り歩きして議論の燃料になっている印象です。

トップアスリートはみんな筋トレをしている

現代において、格闘技に限らず、スポーツに筋トレは有効だというのが優勢な意見ではないでしょうか。筋トレは一切せずに、競技練習のみで肉体を鍛えるべし、という極論は支持されにくいのではないでしょうか。事実、多くのトップアスリートがウエイトトレーニングに取り組んでおり、ボディビルダー顔負けの重量を上げている姿をSNSなどでも見る時代です。ボディビルダー的なトレーニングは否定しても、競技に近い動作でおこなう筋トレ、筋肥大を狙うのではなく筋力増強を狙うトレーニングの有効性はスポーツ界で大きく支持されている手法ではないでしょうか。みんなが大好き堀口恭二選手も自身のYouTubeで筋トレの様子を動画配信していました。

マチュアアスリートは筋トレすべきか

さて、われわれアマチュアアスリート、さらにへりくだって中年MMA愛好家も筋トレをするべきでしょうか。
筆者は筋トレできるならしたほうがいい、という考えです。
しかしながら、職業で格闘技をやっているわけでもないわれわれですから、格闘技にまつわることに割ける時間も限られています。筋トレをすると格闘技をする時間がなくなる、ということであれば、格闘技を優先すべきかとおもいます。格闘技がうまくなる、強くなるのは、格闘技の練習をするのが一番の近道でしょう。
もうちょっと時間に余裕がある、ということであれば筋トレもすることは、あなたの格闘技ライフにとってとても有意義なものになるとおもいます。
筋トレでつけた筋肉は競技には使えない筋肉だとか、体が固くなるだとかの心配は無用です。そんな筋肉、生半可なトレーニングではつきません。階級制ですから、試合に出ようとおもったら減量も必要になるかもしれません。そんなとき、筋肉は脂肪より重量が重いから減量には不利になる、と考えることも無用でしょう。コンテストに出るためにボディビルダーもまた厳しい減量をします。彼らが減量時に筋肉を減らさないことに心血をそそいでいることはご存じでしょうか。減量しようとすると必ず筋肉も削がれるのです。あなたがちょっとがんばってつけた筋肉など、へたな減量をしたら簡単になくなります。だから筋トレは無駄とは結論しないでください。われわれも筋肉をなるべく残す減量をして、試合体重を作る必要があるのです。そうしてできあがった体は美しく、格闘家としての迫力を増し、パワーの底上げを果たします。

筋肉はケガ予防にも有効

筋肉はケガの予防にも有効です。筋肉はなにも重いものを持ちあげることだけに作用しているわけではありません。人間の関節を繋いでいるのも筋肉、骨や内臓を保護しているのも筋肉です。筆者のジムでも、格闘技をする以前の身体作りが必要、という話が出ることがあります。筆者は「以前の」と言ってしまうのには抵抗がありますが、ケガ予防や、運動能力の向上ということを考えれば、筋トレは非常に有効だとは考えています。
筆者は格闘技をはじめる前から趣味で筋トレをしていたため、違和感なく筋トレを継続していました。筆者はジムの中でも筋肉量が多いほうで、その体格を「キン消し」と称されるような体つきをしています。と同時に、みんなが口をそろえて言うのが、力が強い、体幹が強い、といわれます。これはそのまま武器になっていて、腕力にばかり頼るのは技術の向上を妨げてしまうかもしれませんが、さまざまな技がある中で、戦法の選択肢を広げることに繋がるはずです。筋肉がないからこそできる技というのはかなり少ないとおもいますが、筋肉があるからできる技というのはその何倍もあるでしょう。
筋肉は正義なのです!

どんな筋トレをすべきか

筋トレは奥が深く、追及すれば幻惑の樹海に飲みこまれていくこととおもいます。そこで難しいことは考えず、アマチュアのわれわれはBIG3を中心としたトレーニングに励めば、愛好レベルには足りるとおもいます。
BIG3とは、上半身の前面の強化を目的としたベンチプレス、上半身の背面の強化を目的としたデッドリフト、下半身の強化を目的としたスクワットの3つのトレーニングをさします。基本的にはバーベルやダンベルといったウエイトを用いておこなうトレーニングです。この3つのトレーニングはコンパウンド種目と呼ばれ、複数の関節、筋肉を稼働させておこなうトレーニングであり、効率よく全身の筋肉を鍛えることのできる種目といわれています。これと対比になるのがアイソレーション種目と呼ばれるトレーニングです。雑に説明すると、マシンを使ってアームカールをするようなトレーニングで、上腕二頭筋のみを鍛えるようなものです。上腕二頭筋のみに効かせるという意味では効率がいいけれど、複数筋肉を同時に鍛えることや、身体の連動性といったメリットが享受できません。個別部位の強化に特化するより、時間あたりの強化箇所の多さを狙ってコンパウンド種目をメインにしていきましょう。
BIG3が筋トレの代名詞ですが、さらにBIG5、BIG7といわれる筋トレ法も存在します。
BIG3に加えて、チンニング(プルアップ・懸垂)、ショルダープレス(あるいはミリタリープレス)を加えてBIG5、さらにそれにバーベルベントオーバーローイング、ディップスを加えた7種目をBIG7と呼びます。
筆者もこのBIG7はやっています。ただし、デッドリフトはハーフ(あるいはトップサイド)と呼ばれる、床から引きあげない方法でおこなっています。デッドリフトは背中の種目か、足の種目か、と議論されることもあり、床から引きあげるデッドリフトは足の裏側(ハムストリングス、大殿筋)に大きく作用するので、足の種目だとも議論されるのです。筆者はデッドリフトを背中の種目としてやりたい(背中の日に足を疲労させたくない)ので、ハーフでやっています。まあこのハーフデッドリフトも大議論になってしまう種目なんですが……。じっさい、デッドリフトは背中でも下側に負荷が集中しやすいとおもうので、とくにチンニングを組み入れるのがおすすめです。
ちなみに筆者は、筋トレを基本的に筋肥大目的でやっています。筋出力は肥大化した筋肉についてくると信じています。競技で使える筋肉は、競技で肥大化した筋肉に神経を通していけばいいと考えています。もとより、競技のために筋トレをしたのではなく、ボディメイクのためにはじめた筋トレで、いまもボディメイクの意識が強く、その結果競技にも役に立つだろう、と考えてやっています。
いいんですよ、美しい体をつくるための筋トレで。しょせんはアマチュアなのですから。