MANULのブログ

総合格闘技の生涯スポーツ化を考えるブログ

MMAをするためにかかる費用

MMAをやることに興味をもって、気になるのは費用のことでしょう。
ジムのHPを見れば会費など載っていますが、最低限用具なども必要になるわけで、じっさいどのくらい費用がかかるでしょうか。
あくまで筆者のケースですが、参考例を書いてみたいとおもいます。

●会費

さまざまなジムがありますが、月会費は1万円前後が相場でしょうか。中にはプライベートレッスンで一回何千円とする高級志向のものがありますが、ここでは会員がスケジュールにあわせるジムを想定します。
はじめに入会金を月会費と同額とられるところが多いでしょうか。
プラス2千円弱のスポーツ保険の加入を求められるところが多いとおもいます。
最初に二か月分の会費を払う、というケースもあるのではないでしょうか。
そうすると、まず3万~5万円ていどが入会時に必要になるかとおもいます。
これに月会費が毎月1万円前後かかり、ジムによっては年に一回年会費、更新費という名目で、やはり月会費と同額か、半額といった金額を求めてくるところがあるかもしれません。
とりあえず、年間12万円前後の維持会費がかかると計算してみましょう。

●用具費

さて、MMAをするには用具が必要です。素手で殴りあうわけにはいきません。MMAの醍醐味オープンフィンガーグローブが必要です。ジムによっては貸出をしていて、必ずしも自前で用意する必要がないかもしれません。しかし、高級志向のジムだったり、有料で貸出ししているジムではなく、無料で借りられるようなジムであれば、そんなに予算をかけて手入れをしていないでしょう。体験希望者のために置いてある、というのが実際のところではないでしょうか。臭いや劣化が気になることもあるとおもいます。劣化していなくても、人の手はそれぞれ大きさが違うので、自分の手にあわないグローブを使ってサンドバッグ打ちやミット打ちをしたら、拳がすりむけるケガを負いかねません。筆者は自前のグローブでさえ、インナーグローブを使っていたら広がってしまい、素手ではサイズが合わなくなってしまいました。あと、なにげに重要なことかとおもっているのですが、自前の用具を持つことでモチベーションが上がることもあるとおもうので、基本的な武具は自前で持っておいていいのではないかとおもいます。

オープンフィンガーグローブ

MMAの代表的な武具であるオープンフィンガーグローブMMAを象徴するアイテムですね。これについては好みと予算で決めていいとおもいます。ジムによってはクッション(アンコと呼ばれる殴る部分)の厚みを指定されているかもしれないので確認してみましょう。練習用であればクッションは厚いほうが安全でいいとおもいます。アマチュアの大会なんかの指定グローブもアンコが厚いケースがあります。出たい大会を見越してグローブを買ってもいいかもしれませんね。実際のグローブに慣れることができますし、モチベーションアップにもつながるとおもいます。プロ団体の憧れのオフィシャルグローブでも、モチベ―ションアップにつながっていいんじゃないでしょうか。
これは筆者の考えですが、グローブはべつに高価なものでなくていいとおもいます。筆者が気にするとしたら、アンコの厚み、サイズ感、手首のホールドの三点です。プロ団体のオフィシャル商品など、もちろん品質はいいのでしょうが、ふだんの練習で本気で殴りあいをするわけでもなし、プロ仕様であればアンコが薄くなりがちだとおもうので、練習にその品質を求める必要はないのかなと考えるところです。
最近は洗えるウォッシャブルグローブと機能性を謳ったものもありますね。グローブは使っていると臭います。消臭剤を使ってもまにあいません。たぶんスパーリングしている相手は気にならないとおもいますが、使っている本人は不快感をおぼえます。洗えるとたしかにいいな、とおもいますが、費用はとうぜん高くなりますね。使ったことがないので、使用感も耐久性も筆者にはわかりません。
筆者が最初に買った商品はこちらの商品でした。

もう一段上の商品にGLADIATORのロゴが入った団体オフィシャル商品がありますが、店員の説明を聞く限りロゴが入っているか入っていないかの違いくらいなのかな、という印象でした。べつだん団体に憧れがあったわけでもないのですが、ボディメーカーの店舗が閉店セールをやっており、半額で買えたのでせっかくならいいやつを買おうと買いました。これがインナーグローブを使ったらガバガバになってしまった思い出のグローブです。一年ほど使ってマジックテープがバカになってしまい、引退しました。
いま現在筆者が使っている二代目グローブはこちらです。

アンコがそれなりに厚く、手首のホールド感もいいです。値段も高くないので、おすすめできる商品です。

●レガース・シンガード

脛あて(レガース・シンガード)も自前で持っておくといいとおもいます。レガースはつけていると汗をかくので、ジムのレンタル用品でジムがあまり手入れをしていないと、清潔とはいえないものになってしまうとおもいます。ジムによってはマジックテープがバカになっているものを見かけることもあろうかとおもいます。
レガースは布製の履くタイプと、革製の巻くタイプ、大きく分けて二種類あるかとおもいます。まずはどちらのタイプがいいかジムに確認してみてください。キックボクシングなんかだと革製のタイプを推奨されるかとおもいます。こちらのほうが被ダメージは少なく済みます。ただ、寝技の展開はしづらくなります。
布製の履くタイプでも、お互いにレガースを履いていれば、よほど全力でぶつかりあわなければ致命傷にはいたらないとおもいます。ちゃんとカットすれば痛みもほとんどないですが、最初のうちは痛くて歩くのもままならなくなるかもしれません。こればかりは慣れるしかありません。筆者もビール瓶やら砂袋で脛を打つ部位鍛錬をしました。コーチによっては不要という人もいて、正解はよくわかりませんが、空手なんかではいまでも稽古としてやる古の特訓法の一つではないでしょうか。やらないよりやったほうが強くなる気はします。
MMAをするなら布製の履くタイプをおすすめします。やはり組技、寝技をすることを考えればこちらです。打撃しかやらない限定スパーをする機会があれば、革製レガースも持っているといいかもしれません。筆者も革製レガースを一つ持っています。これは足を痛めて、少しでもダメージを軽減したくて買ったものです。ふだんは使っていません。MMAの試合でもレガースを装着する場合は布製のタイプになるかとおもうので、特別な理由がなければ布製でいいかとおもいます。
筆者は布製のタイプを三つ持っています。特にこだわりはありませんが、安心と実績のISAMI製品と、ボディメーカーの製品を交互に使いまわしていることが多いです。

もう一点布製の商品を持っていますが、こだわらずに白色のものを買ったら汚れがめだってしまい、あまり使っていません。
革製のレガースはこの商品を買いました。

とくに不満はありません。MMAの練習もできないことはないかなと個人的にはおもいます。

●ニーガード

筆者のジムでは筆者以外つけている人がいません。しかしながら、膝でガードされると攻撃した側に猛烈な痛みがあるので、相手のためにつけています。痛みを通して攻防のテクニックをおぼえるという荒療治的な考えもあるかもしれませんが、安全第一でつけています。高いものでないですし、タックルの時に膝を保護してくれるので、筆者は装着をすすめます。筆者が使っているのは安心と実績のISAMI製です。

●マウスピース・マウスガード
打撃のスパーリングをするなら必須です。個人的には寝技をやるときでも装着をおすすめします。筆者は柔術クラスでも必ずつけています。膝とか平気で顔面に入ります。
筆者は最初ショックドクターのマウスピースを使っていました。しかしながらスパーリング相手の蹴りがあごにヒットし、口の中を切った際に、インストラクターからオーダーメイドのマウスピースをすすめられ、歯は一生ものだからケチって損傷してもつまらないな、と考えてオーダーメイドに踏みきりました。ちなみに、口の中のケガ自体は、オーダーメイドのマウスピースなら防げたかといえば、そうとも限らないとおもっています。比較していないのでなんともいえませんが、オーダーメイドのマウスピースをしている今でも、唇を切りますので。
しかしいまではもう既製品のマウスピースには戻れません。先日、オーダーメイドのマウスピースを忘れてしまい、念のためでカバンに入れてあるショックドクターのマウスピースをしかたなく使いましたが、やはり装着感が雲泥の差でした。ショックドクターが悪いとかではなく、筆者の作りかたが悪かった可能性もありますが、ショックドクターのマウスピースを噛んでいたときに感じた息苦しさがまるでないのです。ピンキリかとおもいますが、1万円~2万円で安全と快適を得られるので、オーダーメイドをおすすめします。

●運動服

ラッシュガードの着用をすすめられることが多いとおもいます。筆者もジムに入会するときに、「ふつうは着る」と言われましたが、べつに強制されませんし、着ないでやっている人もざらにいます。必須ではないですが、マナー的な意味でも用意しておいて無駄ではないとおもいます。ラッシュガードという商品にこだわらず、コンプレッションウェアという商品名の安物でぜんぜん問題ないとおもいます。たくさん商品があるので、自分の体にあうものをいろいろ試して楽しみながらさがしてみるといいとおもいます。そんなに簡単に着られなくなるような代物ではありませんが、臭いがとれなくなることがあるので、やっぱり消耗品です。清潔感のためにワンシーズンで買い替えるくらいのペースで負担の無い価格帯を選べばいいのではないかとおもいます。筆者はアンダーアーマーやアマゾンで安い商品をよく買っています。

アンダーアーマーの商品は伸縮性が高く、圧が強すぎないので、大きめのサイズを、他の商品はジャストサイズで買っています。
ボトムスのコンプレッションウェアは、寒い時期には着ていますが、暑い時期は短パンです。ですが、コンプレッション機能のあるスパッツを履いています。股間が安定するという気分的なものなので、必須ではないとおもいます。

 

短パンはポケットの無いものを履いています。ジムから指示されない限り、ポケットつきのものでも問題ないとおもいます。しかし、けっこう指先がポケットに入りこむもので、危ないです。相手のことを考えて個人的にポケットの無いサッカー用の短パンを履くか、寒い時期であればロングスパッツの上に短いスパッツを重ね着することもあります。シュートボクシングスタイルと揶揄されます。

 

 

 

トップスはコンプレッションウェアの上に半袖のスポーツシャツを着ています。こだわりはなにもありません。千円~二千円で買えるようなものを着ています。
試合着でないかぎり消耗品と割りきって、安物を着潰すのが清潔感もあっていいのではないでしょうか。

●最低限かかる費用

最低限必要なものといえばこんなところではないでしょうか。
まとめると、
入会時点で5万円~7万円
ランニングコストで15万円前後/年(毎月の会費+季節ごとに運動服を買い替えると計算)

というところではないでしょうか。

筆者はこのほか、持病のTFCC損傷のために毎回テーピングをしているため、テーピング費用が定期的なコストとしてのしかかっています。
あとはドリンク代ですね。筆者はプレワークドリンクを自作しているので、サプリメント代がかかっています。
柔術をやる人には柔術着の費用がかかります。一着あれば高頻度で練習していても一年は耐えるのではないでしょうか。高頻度で通おうとすると、洗濯が追いつかないからともう一着欲しくなったりはしますし、じっさい筆者は練習着3着、試合着1着と用意しています。いずれも一万円しない安物ですが、柔術愛好家は柔術着にこだわったり、収集したくなりがちなので、まだまだ使えるのに新しいのを買っては奥さんに怒られる、というのがパターンではないでしょうか。
筆者は最初の柔術着を白色で買いました。柔術着っていろんな色あるけど、初心者は白色じゃなきゃなめてるって怒られるんじゃないかとおもっていました。白って汚れが目立ちますよね。まもなく後悔して、二着位目以降は有色柔術着を買っています。

どうでしょう。MMAをするためのランニングコスト、高く感じますでしょうか?
習いごとの中でもマイナーなものなので、会費を高いと感じるかどうかですが、他の習いごととくらべても会費自体はそんなに高いわけでもないのではないでしょうか。毎日なにかしらのクラスがやっていて、何日出てもかまわないジムであれば、出れば出るほど会費は一回あたり安くなります。
やってハマるうちに、道具代をバカスカ浪費してしまうかもしれません。ご利用は計画的に、ですね。

MMAをやると、MMA観戦がおもしろくなる

わたしたちがMMAの観る専だったとき、それはもう好き勝手にだれが強いの、だれは弱いの、あそこで寝技につきあうべきじゃなかった、逃げてないでつっこむべきだった、などと放言していました。
MMAを実践すると、鑑賞眼は格段にあがります。ケージやリングの中で闘う戦士たちが、いかに高度で勇気のあることをしているか、身に染みてわかります。
格闘技の舞台にあがること自体に賛否が起こるような選手がいます。筆者も全員が全員とはいきませんが、あの場に立って本気で相手を倒しにいく、倒されるかもしれないという覚悟を実現させたことが、もうとんでもないことだとリスペクトするようになりました。
たとえばパウンド、グラウンドで上になったら、とにかく勢いでパウンドを打ちこめばいい、などとおもうことがあるのではないでしょうか。やってみればわかります、パウンドなんて容易にあてられません。ヒョードルヴァンダレイ・シウバガードポジションの相手に強烈なパウンドをブチこんでいたのは(情報が古いですね)、彼らが類まれな技術を持っていたから、あるいは寝た側の技術と差があったがために通用したことだとか、見た目ほど単純な技術ではないことに気づくでしょう。
とくに寝技やグラウンドの攻防は、その奥深さを知るとおもしろみがよくわかり、うんちくなんぞたれたくなることでしょう。現代MMA愛好家たちは、グレイシー一族の出現に驚きおののいた時代のMMA愛好家たちとちがい、寝技を知っています。しかし、実体験をしないかぎりその真価にたどりつくことは難しいとおもいます。
観るおもしろさが増すし、スパーリングでも試してみよう、というおもしろさもあります。MMAがますますおもしろくなる好循環が生まれることでしょう。口だけのやつとちがってオレは知ってるんだぜ、という優越感も生まれることでしょう。
MMAを実践すると、より観戦がおもしろくなるオマケもついてきます。軽い動機ではじめてみても悪くないんじゃないでしょうか。

MMAはケガをするのか

MMAをやってみたいと考えて、不安材料の筆頭格にくるのはケガではないでしょうか。なにせ格闘技。投げるしかない柔道だって骨折したりするでしょう。殴ったり蹴ったりする空手ならなおのこと。寸止めの伝統派空手でさえケガをするときはします。筆者は幼少期、一年たたずに辞めましたが伝統派空手を習っていましたが、寸止めなんて嘘です。あれはふつうに当たっています。柔術はケガが少ない、安全などといいますが、関節を曲げてはいけない方向に曲げて、首を絞めたりしているわけですから、勢いあまればケガはします。その全部をやるMMA。とうぜんケガをするときはします。
ケガの大半はスパーリングで起こるものだとおもいます。とはいえクラス練習でも、打ちこみ相手が未熟だったり、あるいは自分が未熟でケガをする可能性もゼロではありません。なんでもない動きで自爆して足を捻挫するなんてこともあるあるでしょう。

スパーリングでケガをしないために

スパーリングでケガをしないためには示しあわせることが重要です。軽くお願いします。最初にいいましょう。言っといて、自分は当てたいからと振りが強くなったり、全力で投げようとしたり、アクロバティックな動きでパスをしようとしたりして、ヒザが相手の顔にあたったりはあります。アクロバティックな動きなんてしなくても、ヒザが顔とかに入るのはよくあることです。軽くしようといったからには、自分自身が軽くやりたいことを態度で示しましょう。自分は本域でやりたいけど、相手には軽くやってほしいなんてうまい話はありません。相手が講師であればいいかもしれませんが、会員同士は対等な立場です。レベル差があるのだから、弱い自分はいい思いをさせてもらって当然などという考えは甘いです。中には優しくてつきあってくれる人もいるかもしれませんが、相手だってうまくなりたくて練習しているのですから、寸止めで当てる練習をしたりするでしょう。相手は寸止めするつもりでも、あなたが突っこんできたら当たります。相手はあなたとおなじ会員です。あなたがどんな行動に出ても寸止めできる達人ではありません。
だからといって必要以上に縮こまってなにもしなかったら練習にはなりません。あなたも攻撃は寸止めしましょう。そしてしっかりと防御する意識を持ちましょう。攻撃を学ぶことは重要ですが、防御を学ぶことはさらに重要です。ケガをしないためにも。
世の中には手かげんができない人が存在します。悪意なく、緊張して本人はその気がなくても、腕を振りまわしてしまうひとがいます。そういう人が相手であればなおのこと防御を練習する機会にしてみましょう。しかしながらお互いに未熟だと、防御しきれないで痛いダメージを負うこともあるでしょう。言えるようであれば言いましょう、もっと軽くお願いしますと。言えないこともあるでしょう。その場合はその人とのスパーリングは避けましょう。あるいはグラップリングだけのスパーリングにしてもらう。まちがっても打ちかえしてわからせようとはしないでください。負の連鎖です。あなたのジムのスパーリングから負傷者がいなくなりません。
中には悪意を持って痛いダメージのある攻撃をしてくる人もいるでしょう。実力差も開きがあるのに、初心者狩りをしてくるような人です。そういう人はスパーリング相手にしないことです。断りましょう。しつこくてどうしてもその人とスパーリングをしなければならない、それが辛くて練習ができないというジムも存在するかもしれません。その時はジムを変えてもいいかもしれません。そのジムで練習することと、格闘技を練習すること、どちらが大事でしょうか。続けられる選択肢は一つではありません。

かくいう筆者も大小さまざまなケガをしました。
入会して一か月たたずにアバラにヒビが入りました。人生初の骨折でした。加害者は会員。しかも中学生。空手のバックボーンがあって、中学生ながらするどい打撃ができる子でした。彼の放った回し蹴りがアバラに突き刺さり、レントゲンにはっきりとヒビが映りました。約一か月、寝起きも痛い、トイレも痛い、治療法もなく耐えるしかない日々を過ごしました。
もちろん心が折れかけました。才能ないなあとおもいましたし、格闘技をやるには貧弱なんじゃないか、やはり年齢的にきついのではないか、いろいろマイナス思考が頭をよぎりました。けれど、まだはじめたばかり。このケガは事故。こんなところで辞めたらなにも残らない。もう買ってしまった使い道のない用具だけが残る。ここは耐えると念じながら復帰しました。
その後、二か月ほどして首が痛むようになり、かかりつけの整形外科にMRI診断を勧められました。人生初のMRI。結果的にはヘルニアなど大事にいたる症状は発見されませんでしたが、首のケガは大事にいたると後遺症を残しかねない、さらに仕事で一か月通えないことが確定していた時期だったので、入会して三か月ほどで休会することにしました。体外衝撃波なる不快なリハビリを受けていましたが、良くなる気配はなく。格闘技を休む代わりに筋トレをしていたので、そこそこ首も力むので安静にしていたわけではありませんでした。復帰したのは仕事のキリがよかったタイミングで、まだ首の痛みは残っていました。痛いなとおもいながら通い続けて、そのうち痛みは消えました。その後も突き指したり、腰を痛めたり……それでもなんとか続けながら克服したり、だましながら負傷と付きあってやっています。

ケガは慣れる

骨折のようなどうしようもないケガもありますが、突き指などはやっているうちに慣れます。突き指をくりかえすと鍛えられるのかどうかはわかりませんが、突き指の原因は技術的な理由もあります。相手のパンチをさばこうとして突き指する、ということをくりかえしていたのですが、突き指をしないさばきかたが存在します。それをおぼえると当然突き指の事故は減ります。蹴りをはなてば自分の足が痛くなりました。これもやはり蹴り方が悪いから自爆するのです。正しい蹴り方を学べば痛める頻度は減ります。
どうしようもないケガ以外は克服する、あるいは慣れるしかありません。あなたに才能がないからケガをするわけではありません。みんなケガや痛みに慣れながらうまくなっていっているはずです。あるいはあなたに人より才能がないために痛めやすかったとしても、努力で乗り越えられるはずです。それが継続です。

いい病院を見つける

そうはいってもケガはしますし、痛いです。となると病院にかかる機会も増えるでしょう。ケガするために高い金を払って時間を消費していると自嘲することがありますが、いい病院を見つけることも格闘技を続ける秘訣だとおもいます。
いい病院の条件は人それぞれかとおもいます。筆者にとっての一番は、待ち時間が短いこと。共感してくれる人も多いのではないかとおもうのですが、筆者の病院の一番のストレスは待ち時間が長いことです。何時間と待たされて、診察は五分とたたず終わる。それで湿布と痛み止めの飲み薬が出るだけ。一週間たったら経過を見せに来いといわれてまた行けばやっぱり数時間待って、まだちょっと痛いですと言ったところで追加で薬が出るくらいで、また一週間たったら経過を見せに来い、このくりかえし。こんなのよくなってきたら行かなくなります。そしてまた痛めたら病院に行き、この不毛な時間浪費をくりかえします。病院も法律があったりの事情で、悪意があって待ち時間をやたら長くしているわけでもないし、集会所にしてます?とおもってしまうような老人たちも、痛いところがあるから通院しているのです。文句はいえません。どこの病院でもおなじ対応なら、すこしでも待ち時間が少ない病院を探す。これに尽きると考えています。
そして、やはり病院によって対応はちがうのです。筆者はTFCC損傷を患ってしまっており、かなりの頻度で整形外科に通ってリハビリをおこなっています。いまのかかりつけの病院に通う前のところでは、前述のとおり人生を無駄にする虚無の時間浪費をくりかえして、薬をもらうかあまりに痛みがひどいとステロイド注射を打つという治療をしていました。医者からは、いずれ体がもたずに壊れますよとあきれられていました。このTFCC損傷という傷害は、筆者にとって格闘技を続ける凶悪な障害になっていました。
ある日、痛みに耐えきれずステロイド注射をしたい、けれどかかりつけだった病院が休業日だっため、近所のべつの病院に行きました。痛み止め注射を打ってほしいと言ったのですが、医者は自分は注射はしない主義だと断られました。それで電気とレーザーのリハビリを施されました。過去にも電気治療を受けたことがあって、まったく効き目がなかったこともあり、自分の望み通りの治療をしない医者の態度に二度とこないとおもっていたのですが、翌日になると具合がよくなっていたのです。あれ効くのか!しかも病院は待ち時間が非常に短く、受付次第順番がきてすぐにリハビリが終わる日も多く、いまではかかりつけの病院になっています。
格闘技に限らず、スポーツを続けるためにいい治療院があることが重要なのではないかとつねづねおもっています。みなさんもケガにめげず、いい病院が見つけられることを祈っています。

とはいえケガはしないに越したことがない

格闘技をやっていると、大なり小なりケガはしようがない、という言葉に出くわすことが多いのではないかとおもいます。みんなどこかしらに不具合を抱えながらダマしダマしやっているんだ。それが美徳のように語られることに筆者は強い抵抗感があります。
ケガは防げないという前提でやっていたら、ケガにいたる事故が起きるに決まっているじゃないですか。こちらはそんな覚悟ではやっていないんです。試合に出ると決意したとしても、ケガを厭わない練習なんてしたくないんです。試合に勝つために練習はしますが、リングに立っているときはどこかしらケガしてる、なんていうことがふつうだなんて、おかしくないですか。
そういう信念を持ってやってるひとは、もう好きにしてくれという感じですが、巻きこまないでくれといいたい。格闘技に人生を賭けているわけではない中年愛好家なんです。ケガしないと辿りつけない領域までいけなくていいです。ケガせずに長く続けられる強さを手に入れたいんです。そのためにはがんばって努力します。
筆者も骨折してしまいましたが、骨折って野生動物なら死に至る致命傷なんですよ。家畜の馬だって骨折したら予後不良で死んでしまうわけです。ニュースでいう「重傷」の定義って、「命に別状はないが深い傷や重いケガをした場合で、全治30日以上要するものを指す」そうです。骨折って、どんなに軽微でも完全に快復するまで一か月はかかるじゃないですか。れっきとした重症なんですよ。骨折するような練習環境って、絶対に異常だと筆者は考えています。
なのでまずは自衛してケガを予防しましょう。とくにスパーリングするときは集中してケガのないように体を動かせるように意識したいです。疲労困憊で足グネるようなほどヘトヘトならスパーリングを一回休むべきです。やっぱりケガさせてくるような相手とのスパーリングは避けるべきだとおもいます。
ケガってまちがいなく挫折に繋がる強力な引き金になるとおもいます。中年は安全第一、無事故をめざして日々の練習に励みましょう。ジム側にもそう考えてほしいところです。

総合格闘技と筋トレ

格闘技に筋トレは必要か。
現在にいたるまで大いに議論になる話題の一つではないでしょうか。格闘技に限らず、ウエイトリフティングボディビルディングなどを除くスポーツにおいて、はたして筋トレは必要なのかが話題になります。
競技に必要な筋肉は、その競技の反復によって身につけるものである。ボディビル的な筋肉は競技にとって過剰であり、邪魔な筋肉として競技動作を妨げる。格闘技では体重による階級分けがありますから、筋肉の重さは議論の的になります。イチローが言ったといわれる筋トレにまつわる言葉も、独り歩きして議論の燃料になっている印象です。

トップアスリートはみんな筋トレをしている

現代において、格闘技に限らず、スポーツに筋トレは有効だというのが優勢な意見ではないでしょうか。筋トレは一切せずに、競技練習のみで肉体を鍛えるべし、という極論は支持されにくいのではないでしょうか。事実、多くのトップアスリートがウエイトトレーニングに取り組んでおり、ボディビルダー顔負けの重量を上げている姿をSNSなどでも見る時代です。ボディビルダー的なトレーニングは否定しても、競技に近い動作でおこなう筋トレ、筋肥大を狙うのではなく筋力増強を狙うトレーニングの有効性はスポーツ界で大きく支持されている手法ではないでしょうか。みんなが大好き堀口恭二選手も自身のYouTubeで筋トレの様子を動画配信していました。

マチュアアスリートは筋トレすべきか

さて、われわれアマチュアアスリート、さらにへりくだって中年MMA愛好家も筋トレをするべきでしょうか。
筆者は筋トレできるならしたほうがいい、という考えです。
しかしながら、職業で格闘技をやっているわけでもないわれわれですから、格闘技にまつわることに割ける時間も限られています。筋トレをすると格闘技をする時間がなくなる、ということであれば、格闘技を優先すべきかとおもいます。格闘技がうまくなる、強くなるのは、格闘技の練習をするのが一番の近道でしょう。
もうちょっと時間に余裕がある、ということであれば筋トレもすることは、あなたの格闘技ライフにとってとても有意義なものになるとおもいます。
筋トレでつけた筋肉は競技には使えない筋肉だとか、体が固くなるだとかの心配は無用です。そんな筋肉、生半可なトレーニングではつきません。階級制ですから、試合に出ようとおもったら減量も必要になるかもしれません。そんなとき、筋肉は脂肪より重量が重いから減量には不利になる、と考えることも無用でしょう。コンテストに出るためにボディビルダーもまた厳しい減量をします。彼らが減量時に筋肉を減らさないことに心血をそそいでいることはご存じでしょうか。減量しようとすると必ず筋肉も削がれるのです。あなたがちょっとがんばってつけた筋肉など、へたな減量をしたら簡単になくなります。だから筋トレは無駄とは結論しないでください。われわれも筋肉をなるべく残す減量をして、試合体重を作る必要があるのです。そうしてできあがった体は美しく、格闘家としての迫力を増し、パワーの底上げを果たします。

筋肉はケガ予防にも有効

筋肉はケガの予防にも有効です。筋肉はなにも重いものを持ちあげることだけに作用しているわけではありません。人間の関節を繋いでいるのも筋肉、骨や内臓を保護しているのも筋肉です。筆者のジムでも、格闘技をする以前の身体作りが必要、という話が出ることがあります。筆者は「以前の」と言ってしまうのには抵抗がありますが、ケガ予防や、運動能力の向上ということを考えれば、筋トレは非常に有効だとは考えています。
筆者は格闘技をはじめる前から趣味で筋トレをしていたため、違和感なく筋トレを継続していました。筆者はジムの中でも筋肉量が多いほうで、その体格を「キン消し」と称されるような体つきをしています。と同時に、みんなが口をそろえて言うのが、力が強い、体幹が強い、といわれます。これはそのまま武器になっていて、腕力にばかり頼るのは技術の向上を妨げてしまうかもしれませんが、さまざまな技がある中で、戦法の選択肢を広げることに繋がるはずです。筋肉がないからこそできる技というのはかなり少ないとおもいますが、筋肉があるからできる技というのはその何倍もあるでしょう。
筋肉は正義なのです!

どんな筋トレをすべきか

筋トレは奥が深く、追及すれば幻惑の樹海に飲みこまれていくこととおもいます。そこで難しいことは考えず、アマチュアのわれわれはBIG3を中心としたトレーニングに励めば、愛好レベルには足りるとおもいます。
BIG3とは、上半身の前面の強化を目的としたベンチプレス、上半身の背面の強化を目的としたデッドリフト、下半身の強化を目的としたスクワットの3つのトレーニングをさします。基本的にはバーベルやダンベルといったウエイトを用いておこなうトレーニングです。この3つのトレーニングはコンパウンド種目と呼ばれ、複数の関節、筋肉を稼働させておこなうトレーニングであり、効率よく全身の筋肉を鍛えることのできる種目といわれています。これと対比になるのがアイソレーション種目と呼ばれるトレーニングです。雑に説明すると、マシンを使ってアームカールをするようなトレーニングで、上腕二頭筋のみを鍛えるようなものです。上腕二頭筋のみに効かせるという意味では効率がいいけれど、複数筋肉を同時に鍛えることや、身体の連動性といったメリットが享受できません。個別部位の強化に特化するより、時間あたりの強化箇所の多さを狙ってコンパウンド種目をメインにしていきましょう。
BIG3が筋トレの代名詞ですが、さらにBIG5、BIG7といわれる筋トレ法も存在します。
BIG3に加えて、チンニング(プルアップ・懸垂)、ショルダープレス(あるいはミリタリープレス)を加えてBIG5、さらにそれにバーベルベントオーバーローイング、ディップスを加えた7種目をBIG7と呼びます。
筆者もこのBIG7はやっています。ただし、デッドリフトはハーフ(あるいはトップサイド)と呼ばれる、床から引きあげない方法でおこなっています。デッドリフトは背中の種目か、足の種目か、と議論されることもあり、床から引きあげるデッドリフトは足の裏側(ハムストリングス、大殿筋)に大きく作用するので、足の種目だとも議論されるのです。筆者はデッドリフトを背中の種目としてやりたい(背中の日に足を疲労させたくない)ので、ハーフでやっています。まあこのハーフデッドリフトも大議論になってしまう種目なんですが……。じっさい、デッドリフトは背中でも下側に負荷が集中しやすいとおもうので、とくにチンニングを組み入れるのがおすすめです。
ちなみに筆者は、筋トレを基本的に筋肥大目的でやっています。筋出力は肥大化した筋肉についてくると信じています。競技で使える筋肉は、競技で肥大化した筋肉に神経を通していけばいいと考えています。もとより、競技のために筋トレをしたのではなく、ボディメイクのためにはじめた筋トレで、いまもボディメイクの意識が強く、その結果競技にも役に立つだろう、と考えてやっています。
いいんですよ、美しい体をつくるための筋トレで。しょせんはアマチュアなのですから。

どれくらいの練習頻度で通うべきか

うまくなるためにはどれくらい通えばいいか、週に〇回で強くなれる?といった疑問がわくかもしれません。
結論からいうと、通えるだけ通ったほうが上達するに決まっています。週に何回通えば強くなれると保証することもできません。
筆者は仕事など予定が入らなければ、週に5日のペースで練習に通っています。MMA3日、柔術2日のペースです。どうでしょうか。まだジム通いをしていない人からすると、多いとおもうのではないでしょうか。そんなに通わないと強くなれないの?と。
はっきりいって、週5通っても強くなれないやつはなかなか強くなれませんし、週に1回しか通えないのに強いやつは強いです。筆者のジムにも月に1~2回しか通っていないのに、強くて敵わない人がいます。こっちは週に5日も通っているのに、いかにこちらに才能がなくて、むこうは才能にあふれているかと挫折したくなります。しかしそこは高望みしない中年MMA愛好家。だいじなのは自分のペース。他人は他人、自分は自分。その人物より強くなることなんて目標にしていないので、自分がやりたいようにやるだけです。
いくら才能があっても、月に1回~2回の頻度でしか練習できないとなれば、圧倒的に練習量が足りずに満足な上達はできないでしょう。大いに願望が混じっていますが、才能がなくても地道に高頻度で練習しているほうが、いずれはうまくなるとおもいます。誰もが口をそろえることだとおもいますが、格闘技の練習は継続力に尽きます。というか、格闘技に限らずあらゆるジャンルの技術習得において、継続に勝るものはないんですね。才能があってかつ努力もできる人間がトップアスリートになれるわけです。われわれ凡才はトップアスリートなど望まず、そこそこ自分がなっとくできるていどに強くなれたら万々歳です。
じっさい、筆者も毎週5日通えているわけではありません。どうしようもなく仕事のつごうで通えない日が出てくるので、月にならすと週に3日~4日がコンスタントなところです。それでも多いと感じる人もいるかもしれませんね。月の半分は練習しているということになりますから。

週に二日は通うつもりでスケジュールをたてる

筆者は最低でもどのくらいの頻度で通うべし、という回答を持ちませんが、ジムのインストラクターは週に二日は通うつもりでスケジュールを立ててほしいとよくいいます。
週に一日では、その日になにか用事が入って来られないと、次の練習まで二週間のブランクが空いてしまう。それを避けるためにも週に二日のペースで、仮に一日潰れてしまっても、もう一日通えればブランクを一週間で済ませられるから、という考えです。
ひとつ参考にしてみてもいい意見ではないでしょうか。

柔術愛好家の練習頻度はすごい

偏見かもしれませんが、柔術愛好家の練習頻度はすごいです。筆者のジムでもいるのですが、ほんとうに毎日練習しているような人がいます。なんなら一日二回練習している人までいます。柔術はそうさせる魅力があるのだとおもいます。柔術愛好家はほんとうにイキイキとしています。練習するほど上達が感じられるから、ハマっていくのでしょうか。筆者もそれなりに柔術の練習をしているつもりですが、あまり上達は感じられません……だから嫌になって練習頻度を落とそうという考えも起きませんが。ジムが居心地いいんだろうな、と見ていておもいます。柔術会員のみなさん、ほんとうに仲良しで楽しそうなんですよね。仲良く相手を傷つけあうという特殊な行動が特別な友情を育むのかな、と筆者は推察しています。
ただまあ、MMAもやってたのに柔術愛好専門になってしまう人が後を絶たず、柔術の魅力はなんとなくわかるのですが、MMAもそうなるような魅力開発が必要なんだろうな、と個人的にはおもっています。

会費を一回あたりに料金換算して考えてみる

練習頻度を上げるために、会費を一回あたりに料金換算して考えてみてください。
月会費が一万円だとしたら、週に一日しか通えていないとしたら、一回2、000円~2、500円くらいになります。
これが月に1、2回だとしたら、5千円、1万円です。
週に二回通えたら一回千円ていどになるのではないでしょうか。
筆者が週に5日のペースで通えれば、一回500円です。
月会費でいくらでも通い放題のジムであれば、おなじ権利を持っている会員でも、一回あたりの料金はこんなに変わるのです。
一回あたりいくらなら許容できますか? 格闘技をするという特殊な場所を提供してもらえる、格闘技の技術を教えてもらえる、スパーリングをする相手を用意してもらえる、これがそろって一回500円は、筆者は激安だとおもっています。筆者の自宅最寄りの公共体育施設のトレーニングルームは一回600円超します。しかもたいしたマシンがあるわけでもなく、フリーウェイトもガチでやっている人には足りない重さしかありません。なんなら筆者のジムには簡易ながら筋トレ設備もありますから、通う頻度が高ければ高いほど、圧倒的なコスパになっていくわけです。
これが一回2,000円なら。先述したとおり、特殊な環境を用意してくれているのだから、必ずしも高くないと考えることができます。パーソナルトレーニングなどであれば一回の料金ももっと高いでしょう。出稽古、ビジター利用を受け入れているジムでも一回2千円~3千円くらいの費用が求められるとおもいます。と考えると、一回2,000円とはビジター料金だと考えることができるのではないでしょうか。ランニングコストとしてはコスパ悪くないですか? ビジター利用ができるジムがあれば、自分が通えるタイミングでそこに行けば済む費用感になってしまうわけです。
セコい考えかもしれませんが、どのくらいの頻度で通えばコスパがよくなるかで練習頻度を決めてみてもおもしろいかもしれません。

練習に行って後悔することはない。でもオーバートレーニングには気をつけて

筆者は週に5日通えるときは通っているわけですが、毎回行く前はダルい気持ちになります。めんどくさい、行きたくないな、という思いがよぎります。毎回です。それなのに行ってるって病的だなと自嘲しています。練習しないで強くなれたら行きません。そうなればいいのに、といつもおもいます。
でも、練習に行ったら後悔することは絶対にないんです。行く前は憂鬱だったけど、やっぱり練習して良かった、と必ずおもいます。そうおもわないのはケガしたときだけです。でも行きたくない理由はケガではないですからね。ただただめんどくさい、しんどいという理由なんです。ケガするから嫌だとおもう場合は、行かないほうがいいでしょう。そう思う理由があるのは異常な練習環境です。中年MMA愛好家にそんな修羅場は不要です。
そして、休んだら後悔するんですよ。モヤモヤするんです。行けたのに行かなかった、サボったという思いは、逃げを自覚しているからみずからを責めさいなむんですね。これを解決する方法は、サボらずに行く、しかないんです。
そしてまた、間隔が空くと行くのがなお憂欝になるんですよ。行くのが怖くさえなるんです。自分は受けいれられるのだろうか、と思い悩みます。でも会費払ってるんだから行く権利はあるよな、とわけのわからないことまで考えだす始末です。これ筆者だけの感情かとおもいもしましたが、他の会員もおなじ気持ちになるといっていたので、これを読んでいるMMA実践者の多くが賛同してくれる感情だとおもいます。この不毛な不安をおさえる、生じさせないためには、休まず通うしかないんです。
筆者が新卒で入った、けっきょく耐えきれず辞めてしまった会社の初めての上司から言われた印象的な言葉があって、モチベーションで仕事をしたらだめだよ、というのがあります。やる気があろうとなかろうと、仕事はしないといけないわけです。モチベーションが上がらないからと仕事に手を抜くと、あとで絶対に痛い目を見るんですよね。これ、仕事に限らず格闘技、だけに限らず趣味でもなんでも継続すべきことすべてにあてはまる格言だとおもいます。モチベーションでやるやらないを決めると継続できません。とりあえずやる、やる気が起きないとか考えずにやる、はだいじです。それがわからなかったから最初の会社を辞めたわけです!
でも、ここで気をつけたいのがオーバートレーニングです。仕事もそうですが、まじめにやりすぎると鬱になりかねません。しょせんは趣味です。どうしてもできない場合は休むべきです。筆者はいまのところオーバートレーニング症候群に陥ったことがないので正確なことはわかりませんが、おそらく練習した後に、来てよかったとおもえなくなったら、オーバートレーニングに陥ったと判断したほうがいいのだろうと考えています。一週間休んでみても気持ちが変わらなければ、おもいきって一か月、もうちょっと休会してみてもいいのかもしれません。そしてまたやりたい気持ちが湧きおこってくれば再開すればいいのではないかとおもいます。遠回りしてしまうかもしれませんが、生涯スポーツとして考えるのであれば、中年MMA愛好家には一つの選択肢だとおもいます。
オーバートレーニングはプロスポーツのみならず、アマチュアスポーツ、特に青少年のスポーツなどでも問題になっていることです。おそらくスポーツに限らず、他人にとってなんでもない趣味でもオーバートレーニング症候群は発症しうる現代病に近しいものだとおもいます。格闘技を愛好し続けるためにも、練習とは適切な距離感を持つことも必要だとおもいます。

総合格闘技はダイエットに向くのか

ダイエット目的でMMAをはじめてみようかと検討している人もいるかもしれません。MMAはダイエット向きでしょうか。
あなたがなんの運動もしていなければ、まちがいなくMMAをやることはダイエットの足しになるでしょう。
しかし、ただ痩せることが重要であるならば、ジョギングやバイク、水泳など、長時間休止せずにおこなえる有酸素運動をしたほうがはるかに効率がいいです。そしてもっというのであれば、メリハリのついたマッチョボディをめざしたいということであれば、運動としては筋トレをするのが最適解でしょう。
格闘技をする以外の生活が変わらなければ痩身作用も出てくるとおもいますが、格闘技をすることにともなって食事量が増えた日には、へたをするとかえって太ることもありえます。
ダイエットの基本、大原則は食事コントロールです。

MMAはダイエット、運動不足解消で継続するにはしんどい

MMAはまちがいなくダイエットにも運動不足解消にも役立ちます。しかしながら、それだけの動機で継続するにはつらいはずです。立っての打撃もある、相手を倒す組技がある、寝てからの寝技の攻防もある、ありとあらゆる激しい運動をするので、まったく楽な運動ではありません。相手を傷つける技術ですから、痛みもともないます。ダイエットや運動不足解消を目的にするには、ほかに楽で安全な選択肢が多すぎるのです。
MMAをやるメリットは、MMAの技術が身につく、格闘能力が高くなることに尽きます。これを目標にできなければ継続するのはしんどいでしょう。
そして道は前途多難です。やること、おぼえなければならないことが多岐にわたって、ひととおりできるようになるまで途方もなく、一生うまくなんてなれないんじゃないかとおもうことが多々あるとおもいます。
この点、柔術はハードルが低いようにおもいます。寝技が中心ですから、MMAにくらべておぼえることの種類が少なく、それでいて一つひとつの技術は奥深く、戦略性も高く、体を使ったパズルと称されるだけあって知的なおもしろみがあります。MMAもおなじはずなのですが、打撃のありなしがやはり雰囲気を変えてしまうのではないかとおもいます。ジムにもよるかとはおもいますが、柔術はアットホームな感じがしますが、MMAは殺伐としがちな気がします。
ダイエット、運動不足解消を目的としつつ楽しめる格闘技に柔術はけっこうあっているとおもいます。筆者のジムにもダイエット目的ではじめてどっぷりハマった人はとても多いです。

それでも長い目で見て、強くなるべく継続をしたい

最初はMMAをやりに入ったのに、あるいはMMAと並行して柔術をやっていたのに、いつのまにか柔術一本になっている方が多い気がします。
スタンドでの打撃の押し引きの末に倒されて、寝技の攻防になって、ブレイクになって仕切り直して立ちあがると、どっと疲れが押し寄せてぜんぜん動けなくなります。観戦してると、試合の終盤で両者ともバテバテになってるのを情けない、お互い疲れてるんだからいけよ、なんて無責任なことおもいますけど、本当に動けないです。
まずMMAのほうが柔術より苦しく息あがるとおもいますが、運動量もさることながら、殴りあうという恐怖心で運動量以上の苦痛を味わうんですよね。カロリー消費と比例しない苦しさなんです。あれはやっぱりしんどい。二年耐えてきていますけど、気持ちいいとかヒリヒリ感が快感だなんて一度もおもったことないです。
筆者ははなからダイエットをモチベーションにしておらず、MMAをしたい、できるようになりたい、というモチベーションで、こんななにも覚えられていないいま辞めたら、はじめた意味がない、という意地で継続しています。
それでも一つひとつできるようになることに喜びを見つけ、長い目で強くなることの憧れを実現させていける継続力こそが、MMAをしていくうえでの最重要事項だとおもいます。最強はめざしていません。自分史上最強はめざしているかもしれません。他人とくらべて強いの弱いのと考えると挫けてしまいそうなので、勝負する相手は自分です。
中年MMA実践者が増えてほしいと願っていますが、モチベーションの置きどころをまちがわないことが継続の一つのコツかとおもっています。

まずはインストラクターの言うことを聞きましょう

いまの時代、YouTubeで「MMA練習法」など検索すると、有名選手が実演してくれる動画がいくらでも見つかります。こういった情報を手軽に入手できるようになったことは、現代格闘技の技術を飛躍的に向上させることに寄与しているとおもいます。じっさい筆者も、YouTubeで見たものをスパーリングで試してみてうまくいったりする経験があります。
でも、そういうのに影響されすぎるのも考えものです。せっかくジムに会費を払って習いにきているのです。まずはジムのインストラクターの言うことを聞きませんか?

練習法に注文をつける人は続かない

ジムに入会して、いきなり練習法に注文をつける人がいます。筆者はそこまできついのは目の当たりにしていませんが、自分はまず防御の技術をおぼえたい、と高らかに宣言した会員がいました。二か月を待たず、その会員の姿を見ることはなくなりました。インストラクターはいさめたりしませんでした。そういう考えかたも全然問題ない。自分なりに考えて練習することはとてもだいじだと励ましさえしました。それなのに辞めてしまうわけです。
おもうに、自分の理想どおりにできないことを、他人のせいにしているのだとおもいます。自分がうまくいかないのは、自分がヘタだからです。これが何年も練習をかさねた人ならともかく、まったく未経験なくせにYouTubeで見た「効果的な練習法」とかをうのみにしてしまうわけです。その情報って無料で得た無責任なものではないでしょうか。ジムのインストラクターは会費をもらって、責任をもって教えてくれているわけです。有名な格闘家の言うことのほうが信頼できますか? それならその格闘家が教えてるか、所属しているジムに行きましょう。インストラクターのことを信用できないなら、そりゃあ続きません。
内心でおもうのはしようがないとおもいます。こんなやり方で強くなれるのか、と疑問におもうこともあるでしょう。パーソナルトレーニングならいざ知らず、インストラクターは参加者全員の最大公約数で練習を考えます。あなたのためだけに練習をカスタマイズしてくれるわけがありません。しかし、あなたのことも考えた練習法なのです。そこの苦労に思いを至らせても考えすぎではないとおもいますよ。
つらくてできないことは、ケガをしないためにも無理せず自己申告したほうがいいとおもいます。でも、初心者のくせに教えにへたな疑問を持つのはムダです。ちゃんと意味があってその打撃は、その組技は教えられているのです。よほど超能力的な話でもされないかぎりは、まずは黙って教わるがままにやってみましょう。
疑問を持つことはだいじでしょう。ただ、それは理屈への疑問にするべきです。この打撃によってどうなるのか、相手の反応は、そこから導き出されるその後の展開は……。なにも考えずに練習すればいいわけではありません。なっとくして練習に取りくんだほうが絶対に効果は上がります。柔術ムーブなどは、それがなんのときに使う動きなのかなど意識したほうが有意義になるとおもいます。

インストラクターはあなた以外にも多くの会員の練習を見て、稽古をつけてきました

あなたに最適の唯一無二の練習法というものが存在しているかもしれませんが、それを見つけることは容易なことではないでしょう。たぶん自己流で練習していても見つかりません。そもそも基本的な練習法も知らずに、自己流で最適解をさがそうなど噴飯ものです。
インストラクターがまずあなたに教えることは、基本的な練習法で、あなた以外にも多くの会員が教わってきたことでしょう。そうして、その教えに継続してついていった人たちは強くなっていったとおもいます。仮にインストラクターが新米で指導歴が浅かったら。あなたは疑いの目を向けるかもしれませんが、すくなくともそのインストラクターが自分が強くなった練習法を、あなたに教えていることでしょう。そのインストラクターが強いのであれば、その練習法を続けていれば、そのインストラクターのように強くなれる可能性があるはずです。
まあ、中には教えベタなインストラクターもいるとおもいます。どうにもあわない人というのもあるでしょう。あまりにも苦痛だったり理解できない場合はジム移籍も検討していいかもしれません。しかし、ほんの二、三か月で教えに疑問を持つのは賢いとはおもえません。だってうまくならないって? それはあなたがヘタだからです。理解力に乏しいのかもしれません。才能がないのかもしれません。教わる人が変わっても、けっきょくうまくならない可能性は大いにあります。
さて、あなたに才能がなかったとしたら、諦めるべきではありません。辞めるべきではありません。才能がなくてもいいじゃないですか。才能があったって、明日、今日と見間違うほど強くなるようなことはありません。でも、続けていればどこかでブレイクスルーするはずです。
ギターの練習でもそうなんですが、毎日おなじ曲のおなじフレーズを練習して、ぜんぜん弾けないと途方にくれる気持ちによくなります。ところがある日、急に弾けるようになるんです。昨日まで弾けなかったのが信じられないほど、弾ける日がきます。これは脳の学習能力によるもので、練習しているあいだではなく、練習していないあいだ、とくに睡眠をとっているあいだに練習内容が整理されて、記憶されて、寝て起きるとできるようになっている、という現象が起こるのだとなにかで読んだことがあります。これはギターとか楽器演奏に関わらず、受験勉強などにもあてはまる話だったはずです。格闘技も身体動作ですから、おなじことが起こるはずです。
最強をめざさない中年MMA愛好家は、ゆっくりとした成長でかまわないではないですか。だいたい一つ前に教わったことが、次の技の練習に入ったら忘れてしまいますから。インストラクターの教えを疑うより、自分の物覚えの悪さを疑うほうが健全です。
まずはインストラクターの言うことを聞きましょう。

余談

SNSでフィットネストレーナーの人が書きこんでいたのですが、金を払って教えてるおれのやり方より、無責任なインフルエンサーYouTuberのへんな筋トレをやるんだろ、とボヤいていました。格闘技以上に筋トレ界隈は身近なインストラクターの言うことを聞かないという悪習が根深いのだとおもいます。
筋トレYouTuberは信じられないような筋量をしていて、自信満々にこれをやってデカくなったと放言します。それはオーソドックスな筋トレ法ではなく、奇抜なトレーニング種目だったり、極端な重量、回数、セット数など、再生回数を稼ぐために常識外れのことをブチあげます。それは偽りなくそのYouTuberには効果のあった方法かもしれませんが、視聴者とYouTuberはけっしておなじ条件ではありません。ボディビルダーの多くは、そんな奇抜なトレーニングをする前に、しっかりと基本的なトレーニングを経ているのであって、奇抜なトレーニングは基本的なトレーニング以上のことをするためのトレーニングでしかない。初心者が基本をすっ飛ばしてやることじゃない、といいます。これは格闘技にもおなじことがいえるでしょう。
MR.BIGのスーパーギタリストであるポール・ギルバートが、最近のギタリストは先人が試行錯誤して開発した技術を最初から存在する環境で練習できるから、先人よりテクニックははるかにうまいけれど、チョーキング一つとっても先人ほど練習していないから本当のチョーキングができていない、みたいなことを言っているのをWebで読んだ記憶があります(だいぶあいまいな記憶です)。現代人はエディ・ヴァンヘイレンが世に広めたタッピング奏法を既知のものとして練習しますが、楽譜があってもけっしてエディが奏でる音にはいきつかないのです。
最後のギタリスト談義は、本筋とまったく関係ない真の余談でした。