MANULのブログ

総合格闘技の生涯スポーツ化を考えるブログ

総合格闘技のジムの選び方

総合格闘技をはじめるのにもっとも重要で敷居の高いポイント、ジム選び。
といっても、筆者もジムのことは自分が通っているジムしかほぼわかりません。というのも、ジムを決めるのに、見学さえいまのジムしかしなかったからです。
なのであまりえらそうなこともいえないのですが、一つの参考例として読んでいただければ幸いです。

ジムに求める一番のことは?

みなさんはジムになにを一番求めますか?
あれこれ思い浮かぶかもしれません。通いやすさ。たとえば立地。自宅から通いやすいか。あるいは仕事帰りに通おうとおもうなら、職場に近いか、あるいは自宅からも職場からも通いやすい中間地点、乗換駅にあるなど。
たとえば指導者。憧れの選手が指導しているジム、応援している選手が所属しているジム、有名選手のジムにいるんだというのは自慢できるかもしれません。
料金。およそ月会費1万円前後が相場かとおもいます。プライベートレッスンをしてくれるようなところだと価格が跳ねあがって、料金体系も一回あたりの金額になったりします。中には、通常のクラスに加えて、プライベートレッスンを受けられるジムもあります。
スケジュール。ジムの開館時間、各クラスのスケジュールが自分の生活スタイルと照らしあわせて参加しやすいかどうか。大人向けのクラスは夜の時間帯におこなわれることが多いかとおもいます。キッズクラスが午後や、夕方の早めに設定されることが多いとおもいます。土日は午前中に大人向けのクラスがあるパターンもあります。総合格闘技のジムであれば、MMAのクラス、キックボクシングのクラス、柔術のクラスと三セットで用意されていることが多いかとおもいます。さらにプラスアルファでグラップリングのクラス、フィットネスのクラス、フィジカルトレーニングのクラスなどあるところもあります。クラスがやっていない間はフリーマットということで、好きにサンドバッグを打ったり、会員同士でスケジュールをあわせて練習したり、筋トレをしたりできるジムもあります。
設備。まずは単純にジムの広さ。狭いジムだと参加者が多いとスパーリングをしていても窮屈になるかもしれません。リングの有無、サンドバッグの台数など、グローブやレガースなどを貸出ししているか、自分で用意しなければいけないか、貸出している場合は費用の有無なども選ぶ要素になるかとおもいます。

一番の選択材料って……

いろいろジムを選ぶ要素についてあげてみましたが、一番重要なのは立地ではないかとおもいます。
自宅からいかに近いか、通いやすいか。これに尽きるのではないでしょうか。
筆者がジムを決めた一番の理由はこれです。自宅から一番近かったのです。そして駐車場が用意されていたこと、車で行かない場合もバイクを置けること、駅からも歩いて行ける距離であること、が決め手となりました。
二番目にスケジュールです。二番目に近かったジムは、クラスの開始が19時30分から。選んだジムは20時からの開始です。二番目に近かったジムは24時間営業で、クラスのない時間はフリーマット開放する、フィジカルトレーニングを自由にしてもいいし、クラスもMMA、キックボクシング、柔術に加えていろいろ用意されているなど手厚い印象がありましたが、筆者はMMAを中心に柔術もやりたいという思いがはっきりしていたので、仕事で残業があっても、すこしでも開始時間が遅ければ、その分しっかりと練習ができると考えました。スケジュールも立地とあわせておなじくらいの決め手でした。
三番目がジムの雰囲気です。これは見学・体験だけでどこまで見極められるかなんともいえませんが、ご自身がジムに求める雰囲気というものはあるとおもいます。筆者でいうと、いまさらプロを目指そうという気持ちもなかったので、スパルタではなく初心者に優しいところがいいなとおもいました。筆者のところは、小学生も中学生も大人のMMAクラスに出て、その親御さんも一緒に参加。受身もろくにできなくても置いていかれない。といって受身ができるようになるまで他の練習はさせないなんてことはなく、おいおい覚えていきましょう、とクラスの内容をこなしていく流れで、他の参加者に迷惑をかけているという思いはさせない雰囲気でした。プロの選手も一名しかおらず、コーチ陣もプロで大活躍していたというわけでもなく、厳しいジムではありませんでした。いまだにプロ練のクラスもなく、クラスとスパーリングを通して強くなっていこう、というジムです。スパーリングはクラスが終わった後に一時間あるのですが、最初の体験からスパーリングに参加してかまわないといわれました。スパーリングってクラスの参加回数のノルマを経たり、トレーナーに認められてはじめて参加できるものじゃないの? とおもっていたのでめんくらったのですが、やってもいいというなら体験してみようとやってみて、トレーナー以外の会員にも接待スパーリングをしてもらって、ここならやれるかもしれないとおもったのでした。

ジムのネームバリューや指導者の質といった要素

もしもいまからでもプロになりたい、世界チャンピオンをめざすんだ、最強にオレはなる! という考えだったら、筆者が選ぶ材料にはならなかった、ジムが有名か、指導者が有名か、といった要素も重要かもしれません。大きな格闘技団体とつながりのあるジムや指導者といった要素もあるかとおもいます。ただ、ボクシングなどとちがって、総合格闘技RIZINなどを除けば修斗パンクラスなど老舗の日本を代表する格闘技団体にも、アマチュアであれば簡単に出場することはできます。そこで結果を残せればプロになることもできます。ボクシングのように各ジムの政治力で試合を組めるかどうかといった環境にはないのではないかと考えています。金原正徳選手も自身のYouTubeでジム選びについて、近所の通いやすいところなどから選ぶべきで、マッチメイクうんぬんはひとまず考える必要がないだろうといっていました。ただ、中にはジムが団体と仲がいいというより、絶縁状態で出禁になっているケースがあるといっていました。それも、どうしてもその団体に出たいんだということがなければ、後からジムの移籍を考えるなど、、最初に考えることではないだろうと言っていて、筆者もこの意見に賛成します。
筆者のジムの指導者はMMAのプロだった経歴がありません。プロ選手が一人だけ所属しています。一生勝てないとおもうほど強いです。もちろん、彼より強いプロ選手は多くいますが、ケンカ自慢みたいな人が彼と勝負をしても、絶対勝てないとおもわせる実力があります。彼は身長が170cmほどで、階級もバンタム級(61.2kg)を主戦場にしていて、軽量級ファイターといっていいでしょう。でも、身長180cmを超える、格闘技以外であれば、ラグビーなどのスポーツをやっていましたといった相手でも倒せるとおもいます。彼はもともと柔道の経験があったそうですが、中学生のときからジムに通いはじめた、ジムが育てあげたMMAファイターです。これから先いくら練習しても彼より強くなることはないなとはおもいますが、有名ジムでなくても彼くらい強くなれることを教われるんだとおもいます。負け惜しみでなく、彼ほど強くなりたいとまで望んでいるわけでもなかったりします。イキのいい若者が体験にきたのを、軽く遊べるくらいにうまくなれたらかっこいいですが、ジムメイトと切磋琢磨しながら一本とったりとられたりの攻防ができるようになれば練習も楽しくなるはずです。なにより、筆者自身が試合に出場し、初心者向けだったとはいえ二十歳前後の空手かなにかのバックボーンがあるらしい対戦相手に、一本はとれませんでしたが判定で完勝といってもいい闘いができたことから、このジムで教わっていることはまちがいではないんだと信じることができました。ちなみに対戦相手のジムは某有名選手が代表のジムで、講師陣も現役プロ、元プロが指導といわば「高品質」指導を謳ったものでした。しかしながら、基本的な練習内容には大きなちがいはないのではないかとおもっています。漫画とちがって、ものすごい突飛な特訓をして気づいたらすごい必殺技を持っていました、みたいなことは現実にはなかなかないとおもいます。教える側が超一流の技をもっていたとしても、それをいきなり初心者が使いこなすことはできないでしょう。最初にやることはコツコツとエビからはじまるのは変わらないのだとおもいます。筆者のジムの指導者は丁寧に教えてくれるし、威圧的なこともなく、スパルタでもありません。筆者からすると指導者たちはとんでもなく強いので、彼らくらいにまで強くなれたら十分というか、彼らくらいに強くなれる気がしません。じゃあやる気がなくなるかというわけでもなく、中年MMA愛好家はそんなに高望みしていないのです。でもピチピチの若者と試合をして勝てるわけですから。やりがいはあります。

ジムの雰囲気、ジムメイト

前の文章で指導者の質はべつに高くないかのように読めてしまうかもしれませんが、そんなことはないとおもいます。とくに柔術ですが、近隣のジムを辞めて流れてくる会員が少なくありません。柔術講師は別のジムでも講師をしているのですが、そこの会員が流れてきたり、ほかのジムのクラスの状況が芳しくなくて流れてきたり……。筆者はほかのジム事情に疎いのですが、筆者のジムの柔術は評判が高いようです。
筆者のジムでは柔術が活気があふれています。筆者より年上の中年柔術家たちが、日夜練習に励んでいます。SNSでも柔術界隈の盛り上がりを目にすることが多いですが、柔術愛好家の柔術愛は激しいものがあると感じます。やる人は毎日練習しています。筆者はMMAだけでなく、柔術も週に2~3のペースで参加しています。柔術自体好きですし、柔術の技がMMAでも役に立つ必須課目だと考えています。
筆者のジムはとくに柔術の会員の参加人数が多く、熱意が強く、仲が良くて結束力が高いです。一緒に切磋琢磨して強くなっていこうという好循環が生まれています。
必ずしも会員同士で仲良くしたいわけじゃない、馴れあいたいわけじゃない、とおもう人もいるかもしれませんが、格闘技の練習は一人ではできません。それこそプライベートレッスンでも受けるなら話はべつですが、相手がいないと攻撃も防御も学べません。コンタクトスポーツの極みといえる格闘技です。仲が悪いより、仲がいいほうが楽しく練習できるのは自然なことです。
筆者のジムのMMAクラスには、筆者の一個年上で、三十歳からMMAをはじめた会員がいて、この人の存在は筆者にとって非常にありがたいものです。背丈もおなじくらいで、階級もおなじです。年齢も同世代で筆者よりずっとうまい先輩格闘愛好家。しかしながら、このまま続けていけばいつかは手が届くのではないかとおもわせる差なのです。侮っているというわけではなく、おなじく中年ではじめて、コツコツ練習していけばここまで強くなれるし、まったく歯が立たないわけでもない、タイミングばっちりなタックルが入ることもある、という身近なベンチマークなのです。筆者がジムを続けていけているのも、そのジムメイトのおかげがあるとおもいます。ジム内の陰湿ないじめだとか人間関係だとかに巻きこまれていないですし、目に見えてひどいのを感じることもなく、居心地よく通えています。
これがもしジムメイトが世界最強を目指す、手かげん知らずのファイターばかりだったら続けられていなかったでしょう。あるいは初心者狩りを楽しむような会員だったり、やたら上下関係を押しつけてきたり、体力がありあまる若い会員ばかりで、それを前提にした練習内容だったりしたら、続かなかったかもしれません。
筆者は年上は常識的に敬いますし、先輩会員にも敬意を払いますし、強い会員も素直に尊敬します。だからといって、年下や新参会員にマウントをとるようなこともしません。親戚でもないし、会社でもないですからね。おなじ会費を払って、おなじ会員権を持つ同等の相手です。人間的な好き嫌いはあったにせよ、ジムメイトとして敬意を持ち、わきまえたふるまいができなければ、会員、格闘技は続けられないのではないでしょうか。それを感じさせない人物が幅を利かせているようなジムで、あなたがそれに耐えられないのであれば、そこはあなたの居場所ではないのだとおもいます。ジムはそこだけではないでしょう。立地的に近所にジムが少ない人は気の毒ですが、あるジムが嫌だから格闘技を辞めてしまうというのはもったいないとおもいます。

けっきょく近所のジムに通うのが妥当

ジムの選び方についていろいろと書いてきましたが、入ってみないと本当に自分にあうかどうかはわからない、という身もふたもない結論になってしまうかもしれません。
筆者自身もそうですが、自分のジムしか知らないのは視野が狭いかもしれません。自分にとって最良のジムが世の中にはもっと他にあるかもしれませんが、なんというか足るを知るです。講師陣に教えを乞うのが嫌でなく、ありがたく、一緒に切磋琢磨したいとおもえる仲間がいる。
あっちのジムのほうがいいんじゃないか、と目移りしてしまうかもしれませんが、おそらくジムを渡り歩いて、通えるジムがなくなってしまうより、一つのジムの教えを信じて継続できる人のほうが強くなるのではないかとおもいます。
通いたいジムがあるからといって引越しするわけにもいきませんからね。片道一時間かけて憧れのジムに通うなんて生活、まず継続できません。けっきょく、近所のジムに通うのが現実的な妥協点なのです。
不安は尽きないとおもいますが、まずはジムの見学なり体験に飛びこんでみてください! そしてよろしければ会員になって通ってみてください! コツコツ継続できれば、きっと強くなれます!!

MMAジムではなにをするのか

MMAジムではなにがおこなわれているのか。
おおいなる疑問であり、不安材料かとおもいます。
ここで紹介できるのはあくまで筆者のジムでの内容でしかありませんが、一度だけほかのジムの見学をしたことがありますが、大差はなかったので、一例としてすこしは参考になるかとおもいます。

ウォーミングアップ

筆者のジムではMMAクラスが二種類あり、一つはマット運動からウォーミングアップがはじまります。前転、後転、飛込み前転、倒立前転、開脚前転、側転とやっていきます。小学校でやっていたようなまさにマット運動。筆者はこういうマット運動に苦手意識がなく、誰に教わることもなくバク転までできた青年期を送っていたので、ひさしぶりでもけっこうできました。ただ、三半規管が弱まったのか、練習に慣れた現在でもちょっとクラクラします。
義務教育的マット運動が済むと、前回り受身をします。体育の授業で柔道をやったことがあれば、人生で一度はやったことがあるのではないでしょうか。つぎは柔術立ちです。これが最初にとまどいました。対角の手足と説明されるのですが、わからない。できるようになるまで一か月弱かかりました。そして柔術総合格闘技の基本エビ。これもとまどいました。上のエビとか下のエビ、あるいは柔術エビ、柔道エビなんていわれてよけいに混乱。エビの形はできるようになったものの、二か月くらいは自分がどっちのエビができているのかわかっていませんでした。逆エビ。これはわりとすぐにできました。そして横エビ。これはできるとかできないではなく、めちゃくちゃしんどい。腹筋には自信があったのに、片道も休まずできずに驚きました。そんな横エビも継続していたら片道は休まずできるようになり、往復ができるようになり、でも初心者不在でウォーミングアップが滞りなく進むと途中で力尽きて、それも力尽きずにできるようになり……横エビが一番体力というか、基本ムーブの上達、慣れを感じた運動かもしれません。そして三点倒立をやってマット運動は終了。そこから先は一般的なストレッチで全身を伸ばしていきます。

ウォーミングアップ後の本番

ウォーミングアップが終わって、まずは打撃の練習です。本当に最初の頃は、基本的なファイティングポーズの構えかたと、ジャブ、ワンツーからやりました。慣れてきたいまでは、入会したての未経験者がいない限りはこの工程を飛ばします。ワンツー、左右のフック、左右のボディブローを、ペアを組んで交互に打って守るを二分ほどやります。それから蹴りやコンビネーションの練習です。やはりペアになって、ワンツーミドル、ブロックして出足をローキックする、蹴りをカットする練習、など日替わりでインストラクターがメンバー構成を見ながらやります。
打撃のパートが終わると投げ技、組技です。投げ技を教わり、打ち込んだり、タックルを打ち込んだりします。
投げのパートが終わるとポジショニングです。グラウンドでのパスの練習、エスケープの練習を学びます。
そして最後にサブミッションです。上からのサブミッション、下からのサブミッション、サブミッションの逃げかた、繋ぎかたなど学びます。
こうして打投極を一時間かけて学んでいきます。
こちらのクラスは、その後一時間のスパーリングになります。

クラスの別パターン

もう一つのクラスでは、最初にジム内を走って体をあたためます。ただ走るだけでなく、途中で腿あげをしたり、両足ジャンプをしたり、これを数分やって息をあげます。そのあと全身のストレッチをします。こちらではマット運動や柔術ムーブはおこないません。
その後ミット打ちをします。ワンツー、ワンツーして避ける、ワンツーして避けて打つ、といった複数のバリエーションを三セットほどやります。
それからタックルの打ちこみです。両足タックル、片足タックル、そのバリエーション、タックルを回避する練習など一通りやります。
それから壁レスリングの練習をやります。壁レスリングとは、とくにケージリングを意識した練習で、壁際の攻防の練習です。壁を背負った状態、背負わせた状態を交互に、相手をテイクダウンする練習をします。
つぎはパウンド状態からの攻防です。基本的には下のパウンドを受ける側の練習です。パウンドをいかに防ぎ、下から逆転技をしかける、エスケープ、スイープする、といった練習です。
そして連携技の練習をします。立った状態から打撃をして、相手のカウンターを避けてタックルでテイクダウン、パスしてサブミッションを決めるまでの流れを練習します。
最後にスパーリングを何本かやって終了です。
こちらのクラスはやることが決まっており、日替わりで習う技が変わるということがありません。ただ、筆者のレベルが低いため、全部の技術練習ができていないという体たらくです……。

スパーリング

クラス練習というのはこのように技を習い、打ちこみで形を覚えていくという流れではないでしょうか。
そしてスパーリングで実践してみます。打ちこみでは形を覚えるために共同作業的な動きをしますが、スパーリングでは防御側は回避しようとするわけなので、習ったばかりの技なんて通用しません。
パスもエスケープも、ぜんぜん通用しないじゃん、あの練習意味あんのかよとおもうことでしょう。でもまあ基礎ムーブなのです。基礎ができてはじめて応用技ができるようになり、じっさいにスパーリングでもパスなりエスケープなりできるようになります。そして驚愕するのは、講師をはじめとしたうまいひとたちは、基礎ムーブでパスもエスケープもサブミッションも極めてくるのです。こっちは手順どおりにやっても簡単に防がれて騙された気にさえなるのに、相手は練習どおりに押さえるところをおさえて基礎ムーブをやってきて、びくともしないでまたがれてマウントまでとられます。こちらのレベルが上がっていけば基礎ムーブどおりに攻防が成立することはなくなるでしょうが、圧倒的な力差があれば基礎ムーブで制圧できるほど、ちゃんとした技術なのだとおもいしらされます。

柔術のクラス

柔術のクラスも大きな流れはおなじです。マット運動をして、さらに押さえこみやエスケープにまつわるような、グラウンドを想定した柔術ムーブをやっていきます。MMAのウォーミングアップに柔術ムーブがさらに増えた感じです。
そしてパス、エスケープ、サブミッションの練習と続きます。当然、打撃練習はありません。筆者のジムでは立っての攻防、投げ技やタックル系の練習もほとんどやりません。柔術≒寝技という認識もあるかとおもいますが、柔道から派生したといっても、戦闘不能にでもならない限り投げて一本はありません。投げて寝た状態からが本番の格闘技なので、グラウンドでの攻防の練習がメインとなります。じっさい、勢いよく一本背負いが決まって柔道なら一本でも、投げられた側がそのままバックポジションをとって優位になることがある格闘技です。投げの攻防などしないで座ってしまう、引きこむことが非常に多いことが前提になった格闘技なので、立っての攻防の練習が少ないのだと理解しています。
MMAの寝技の攻防とも共通するところが多いですが、やはり道着を使った攻防で差が出ます。ノーギ、裸でもできるな、とおもう技もあれば、道着がないととうていできないなとおもう技もあって、柔術ならではの攻防、戦略になって、MMAあるいはグラップリングとは勝手がちがいます。筆者は柔術をやっていてもノーギであればどう使えるかを考える癖があります。ラペラを使われるとパニックになります。
そしてクラスが終わると柔術もスパーリングをやります。こちらも一時間ほどです。

ジムの基本的な流れ

筆者のジムでは一時間クラス練習をして、その後一時間スパーリングをやる、というのが基本的な流れです。
筆者のジムではキックボクシングもできるのですが、筆者は一度しか出たことがないので、なにをしているか語るのもおこがましいので控えておきます。やはり一時間クラス練習をしたあとスパーリングになりましたが、スパーリングは筆者のような初心者は暗黙で不参加という空気がありました。これはジム次第だとおもいますが。
ジムにもよるとおもいますが、クラスの途中からでも参加OKだし、途中で退室してもOKです。一時期クラスの途中参加はありかなしか、と柔術SNS界隈でちょっと話題になっていましたが、たしかに「流れ」のようなものが変わるなという感じはありますが、途中参加なんてけしからん、と筆者はおもわないので気にしていません。クラスには出ないでスパーリングだけ出るというのもふつうだとおもいます。ちなみに筆者は基本的にスパーリングだけの参加はしません。クラスの冒頭から参加して、スパーリングまで、二時間練習するのがルーティンです。自分ごときがスパーリングだけ出るなんておこがましい、という意識があるのですが、好きで勝手にやっていることなので、まったくの初心者会員が途中参加したりスパーリングだけ出たりしても不愉快になることもありません。ちゃんと全部習ったほうが上達は早いとおもってはいますが、それぞれの生活があるわけで、途中参加になろうと、スパーリングだけの参加になろうと、継続できることが一番重要なことだとおもいます。
このほか、ジムではスパーリングだけの時間というのもあります。クラスのあとにするスパーリングと変わりません。人によってはスパーリングの時間に打ちこみをしていたりもします。

ジムではなにをするのか、疑問解消の役に立ったでしょうか。
ぜひ怖がらず、近くのジムなど目をつけているところに見学、あるいは体験に行くことをおすすめします。
だいたいここに書かれているようなことがおこなわれていれば、最初は疲れてとてもついていけない気持ちになるかもしれませんが、その動きに慣れていないだけで、慣れれば無駄な力も抜けて、あるていど楽にこなせるようになるはずです。運動は基礎体力の問題もありますが、それ以上にその運動をするための身体動作に慣れているかが大きな要因です。
継続は力です。最強になることは至極難しいとおもいますが、それなりにうまく、強くはなれるとおもいます。ちょっと前までバリバリに競技やっていて、しかもその競技で全国大会出場しました、みたいな若者が相手でも、まったく未経験であれば寝技で圧倒できるくらいにはなれるはずです。
興味があるなら、ジムの門をくぐってみましょう!

総合格闘技をはじめるのに年齢は障害になるか

筆者をはじめとした中年MMA愛好家は、いやがおうにも自分の年齢、老いというものを考えることでしょう。筆者は35歳でMMAをはじめましたが、この年齢からはじめられるのかという考えはよぎりました。中年MMA愛好家が実際にMMAをやってみたいと考えたときに躊躇する一番の理由はこれではないでしょうか。

あなたのめざしていることはなんですか?

さて、中年であるあなたはMMAをやるとして、どうなりたいですか?
世界王者になりたいでしょうか? まさか。九割以上の人が首を振るとおもいます。日本王者くらいにはなりたい? 首を振る数はさほど変わらないでしょう。プロになりたい? これでも減らないでしょう。ちなみにプロにはなろうとおもえばなれなくはないとおもいます。それで生活できるかどうかはべつにして。
試合に出てみたい? まだまだ首を振る人が多いでしょう。そうです。試合になんか出るつもりないですよね? それでいいんです。ジム側も、中年のあなたを試合に出そうとか、プロにしようとか、世界王者にしようなんて考えません。ジムはクラスなどを通して技術を、格闘技ができるスペースを提供するだけです。あなたは誰にも試合に出てほしいなどと望まれてMMAをはじめるわけではありません。あなたが試合に出たいと考えないかぎり、試合には出られないのです。

大人だから理解できることがある

習いごとは小さいうちからしなければものにならないとおもいこんでいませんか? とくにクラシック系の音楽など、絶対音感を育てるには1歳からはじめたほうがいいなどという言説まで飛びかいます。それが事実かどうかはわからないので議論するつもりはありませんが、ビジネスのための売り文句というものも大いにあろうかとおもいます。
1歳からピアノをはじめたからといって、全員が絶対音感を得られるわけではないでしょう。ものごころつく前からピアノをさわらせたって、ネコ踏んじゃったも弾けるようにならず、ピアノを大嫌いになる子どもだってできあがることがあるでしょう。英才教育を受けたって、プロや達人になれるのはほんの一握りの人にかぎられるのです。
かくいう筆者は、小学生のころにギターを入手し、練習をしました。当時某有名フォークソングのカバーが某アニメの主題歌に使われていて、それを弾き語りたかったのです。誰も教えてくれる人もなく、それはなかば置物になっていましたが、中学生になってゆずやスピッツを聞くようになり、簡単なコードでガチャガチャ弾いて歌うだけならできるようになりました。しかしそこまでです。どうやら本物の演奏は単純にガチャガチャやっているだけではないようだけれど、どうやっているのかわからない。どうやって練習すればいいのかわからない。そうしてギターは再び置物になりました。
大学生になり、音楽への嗜好が変わります。ヘヴィメタルが好きになったのです。そこには中学生の頃に愛好していたギターとは違うプレイがありました。速弾きです。再びギターへの憧れを抱きながら社会人になります。外回りの営業をサボって楽器屋に入ります。憧れのギターがあります。いまなら弾けるんじゃないか。ちゃんと教室に通えば。もちろん、いままで挫折してきた経緯がありますから、またこんども置物になるんじゃないかともおもうのですが、物欲もあいまって買ってしまいました。ギター教室にも通いました。教わると、なにをすればいいのか、うまくなるのかがわかりました。指板のその音が鳴る場所を押さえる、弾く。それをリズムよく順番どおりにくりかしていく。反復してフレーズをおぼえる。その積み重ねにすぎないと気づいたのです。つまり、一足飛びにうまくなることはない。地味な練習をひたすらやれば、楽譜どおりにはそれらしい演奏ができるようになる。必ずしもこの考えかたが音楽をやるのに正しいかはわかりませんが、好きな曲をコピーする、というだけならじゅうぶんな練習法ではないかとおもいます。
それはMMAでもおなじではないでしょうか。
憧れの世界王者みたいには闘えなくても、憧れの世界王者が使う技を形だけでもおぼえることはできる。それを実戦に使える、コンビネーションとして動きを知ってなんとなくトレースできる。そのくらいは練習すればできるようになるのです。
どうでしょう。MMAをやってみたいあなたは、なにをめざしますか?

なぜMMAをやりたいのか、やってどうなるのかビジョンを持ってみる

さて、世界王者をめざさないわれわれ中年MMA愛好家でも、MMAをいまからはじめても悪いことではないと考えてもらえるようになったでしょうか。
だいじなのはなにがしたいか、どうなりたいかのビジョンをあるていど具体的に持つことではないでしょうか。
筆者は動ける体になること、自分の理想とする動けるとは、MMAの動きをできること、それに耐えるスタミナを持つこと、でした。べつに試合に出なくてもいいから、憧れのMMAの動きができるようになりたい。そこからはじまったMMA実践生活でした。
目標も変わっていくかもしれません。続けるうち、自分の実力を知りたい、測りたいとおもうようになりました。そうしたら試合に出てみたいとおもうにいたりました。そうしてはじめは考えてもいなかった試合出場まで果たしました。
最初から気負う必要はないのではないでしょうか。まず実現可能な範囲で目標を持ってはじめてみる。楽しみを見いだせて習慣化できたらこっちのものです。そのまま続けるのもよし、目標を変えてもよしです。
われわれ中年MMA愛好家がめざすのは、MMAを長く続けてうまくなることではないでしょうか。

年齢は総合格闘技をはじめるのに障害にはならない

年齢を気にしてMMAがはじめられていないあなた、それは気にすることではありません。あなたの家族は年がいのないことを考えてくれるななどというかもしれません。おそらく反対したりするのは家族くらいです。あなたの友人も、会社の同僚も、驚きはしても反対はしないでしょう。受け入れるジムは、もちろん反対なんかしません。プロ志向以外お断りみたいな特殊なジムでもないかぎり。家庭の事情もありましょうが、やるかやらないかは年齢は理由にならず、中年の決意いかんによるものです。
MMAをやったことがある人生、やったことがない人生、どちらを送りたいですか? やってみないとわからないことだらけなことを、中年のわれわれは知っています。MMAをやったことのある人生にしてみてもいいんじゃないでしょうか?